謎のアパートには木とコーヒー、そしてマスターが。
例えば私がセミならば、今日から鳴き叫んでいただろう。本当の夏が来る前に生を全うしたに違いない。
そんな午後、散歩中に一軒の小さなコーヒー屋を見つけた。
リノベーション?
その店が入るのは、確かそんなそんな言葉で表現できたかと確信はないが、小洒落たアパートの一階の端。
その建物はアパートなのだが、アパートに見えない。
私とその間には木のテラスが目一杯広がる。テーブルも置いてあれば、ベンチもある。すべて木材から作られたものとわかる。
日光を吸い込んだそこから柔らかい香りが立ち込める。
勇気を出して足を踏み入ってみる。
コーヒー屋。店名を「THE SUN. COFFEE」という。
なんとも人の良さそうなマスターは同年代、30代前半か。いや、20代後半か。私の方が確実におっさんであることはわかる。
アイスコーヒーをひとつ。
マスター、立派である。そして爽やかである。
気づけば互いの話を。というより、私の身の上話を聞いてもらう。
不粋にならぬよう長居認定が下るギリギリのとこで去る。
いや、やや不粋である。初対面なのだ。
同い年と分かって妙に嬉しくなったか。
美味しかった。
謎のアパートにはその他、書店、雑貨店などが入っている。
いろんな人がいて、いろんなことをしていて、いろんな言葉、表情が行き交うのだろう。
いいなぁと、思った。
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