ピンに!? ピンで!? ひとりで僕が!? ③

ピンのネタを書いたことがなかった私は、自分がどんなネタをやれるか考えました。

認めたくはないけれど、私はひとりではなにもできない。

認めたくはないけれど、私に個性はまったくない。

認めたくはないけれど、私に斬新な感性はない。

お笑い芸人です。おもしろいからお笑い芸人になれたのです。これは認めたい。


なにをすればいい! 

発狂。

漫才がしたい! 相方がおらん! 誰かを探す気にもならん! コントがしたい! ひとりじゃようせん!  ひゃぁー!!!!!


ものまねにたどりつきました。

「サッカー選手の細かいマニアックなものまね」を私は中学の時から友人に披露していました。サッカー部でしたから、そらウケます。マニアックであればあるほどウケました。あれをやるか、やるまいか。ウケるのか、否か。いや、ウケねーだろ。


ものまねするのをやめました。

それから本格的な(自称)ひとりコントを書き上げて、事務所のネタ見せに持って行ったのですが結果は散々。もうそれはそれは見るも無残というか、私は当事者ですがもう手応えのなさに魂が抜け幽体離脱していたので、恐ろしく客観的にその惨状を目の当たりにしたのです。

イッセー尾形さんのファンクラブに入っていたことを誰にも話していなかったことが不幸中の幸い。


ネタのことを故郷にいる幼馴染に電話で相談してみたらば一喝。

「お前、かっこつけんな。本格派気取るな。もうあのコンビの時みたいにはやれないんだから、シュッとしたの目指すな。泥臭くやれ。お前が昔やってた、コーナキックの時ディフェンスに指示をする川口の感情の起伏のものまねしろ。枠を大きく外れると分かったロングシュートを見送りチームを落ちるかせる曽ヶ端のものまねをしろ。遠藤のコロコロPKのものまねしろ」

「いや、でもあれは楽屋でやる程度の遊びみたいなもので‥‥‥」

「お前の遊びは笑わせることじゃないんか? 仕事だとか、プロだとか、芸風とか方向性とか、そんなもん知らんわい。うん、ものまね、あれおもろい。あれやれ」

「………いや、お前何様だよ!」

「お前の相方になりたかったただの素人じゃい」


サッカー選手の細かいものまねを!? ピンで!? あれを!? ひとりで僕が!?

幼馴染の告白が遠く離れた土地からぶっ刺さり、その助言を私は素直に聞いたのです。


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