梅雨らしい梅雨に安堵する少女趣味の男

窓の隙間に雨音が跳ねている。よろしい。梅雨らしい梅雨。美しい季節だ。

男なら男らしくとのマッチョ信仰を持つ両親の元に生まれ育った私。昭和の終わり、あるいは平成の始まりに二人の若者をがっかりさせ続けた私。

第一子、男。紛れもない長男。もちろん嫡男である。先天的に男らしくなく、後天的にもその趣は育まれることはなかった。両親の困惑は物心ついた時には十分理解できた。

花が好きだと云おうものならふっ飛ばされた。差別用語も追いかけてくる。我ながらよく生き延びた。

いつ頃からだろうか。私は太宰治の「女生徒」という小説が好きだ。定期的に再読する。

まったく妙なおっさんになってしまった。

毎日筋力トレーニングに励む。

毎日ランニングにも勤しむ。

夏は刈り上げにする。

眉毛は太め。

髪の毛は太く硬くクセがある。

花柄のシャツを新調したい。

なければタータンチェックのなにかが欲しい。

格闘技を習いたい。

「男は強くなければ生きてゆけない。優しくなければ生きてはいけない」

なんていうハードボイルドな名言を思い出したけれど、やっぱりそろそろ、女生徒を読みたい。





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